道端に輪ゴムが落ちていたことはありませんか?2,3か月程太陽光に照らされていた輪ゴムは伸びずに切れたり、レジ袋でもすぐボロボロになってしまったりします。このように高分子は環境条件によって劣化してしまいます。ここでは劣化についての種類や悪環境においても劣化しないための防止法を説明します。
環境条件による高分子劣化の種類
熱劣化
熱劣化とは、プラスチック製品を高温状態で長時間保持したことで生じた劣化のことです。熱劣化によって起こる性能変化には、色が黄変する、表面に微細な亀裂が生じる、引張伸びが低下する等があります。
ポリマーの熱劣化は、以下のように水素分子が切れることで生じたラジカルが酸素と結合して過酸化物ができ、過酸化物の分解によってさらにポリマーの分解を促進することで生じます。このように自動的に酸化劣化が生じることでポリマー同士の分断や、ラジカル同士の反応によって架橋構造ができることで性能の変化が起こるのです。
![](https://i0.wp.com/chem-notice.com/wp-content/uploads/2023/06/高分子劣化.jpg?resize=614%2C345&ssl=1)
紫外線劣化
紫外線劣化とは、紫外線を照射したことによりプラスチック製品の表面層から分解等が行われる劣化のことです。紫外線劣化によって起こる性能変化には、表面層に亀裂が発生する、その後に内部まで浸透し引張り伸びが低下する等があります。
分子には、特定の波長を吸収することができます。波長は短いほど強いエネルギーを有しているため、分子内の結合エネルギーより大きいエネルギーの波長を吸収すると結合が切れ、ラジカルが発生します。ラジカル発生後は熱劣化と同様に酸素による劣化が起き、性能の変化が生じてしまいます。
加水分解劣化
加水分解劣化とは、エステル結合(RCOOR)を有するポリマーが水によって加水分解されたことで生じる劣化のことです。エステル結合を含む高分子は、PC、PBT、PETなどです。また、ポリウレタンも加水分解劣化を生じます。加水分解劣化によって起こる性能変化には、白化、亀裂、強度の低下等が生じます。
加水分解では、ポリマー分子内のエステル結合部分が水によって分解され、分子量が低下します。また、分解によってガスが生じる場合が多いです。
環境条件による高分子劣化防止法
劣化を防止するためには、製品に安定剤を添加して加工することが多くあります。熱劣化を低減させるために熱安定剤や酸化防止剤、紫外線劣化を低減させるために光酸化防止剤、加水分解劣化を低減させるために水分補足剤などそれぞれの劣化機構に合わせた材料を用いて劣化を防止します。
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