理想気体は、身の回りに存在する気体(実在気体)とは異なり、数々の気体の性質を分かりやすく計算しやすいように定めた実在しない気体のことを指します。ですが、理想気体を用いることで圧力、体積、温度などを実験せずに予想できるようになりました。ここでは、その理想気体について実在気体との違いを含めながら説明していきます。
理想気体の特徴
結論から言いますと、理想気体のみに適応される特徴は以下の2つとなります。
①気体分子の間には相互作用がない
②気体の体積は0である
実在気体では成り立たない気体の状態方程式
(理想気体において成り立つ)ボイルの法則、シャルルの法則は気体の状態方程式というところで詳しく説明していますのでぜひご覧ください。
実在気体におけるボイルの法則のずれ
・ボイルの法則について簡単に復習
理想気体において、温度一定のもとで、一定量の気体の体積Vを減少させると、体積に反比例して気体の圧力Pは増加する。これは、気体の圧力は気体分子の衝突回数と関係しているため、体積を小さくするとその分、容器への衝突回数が増加することに起因します。
実在気体の場合:実在気体では、気体分子の間に相互作用(分子間力)が働きます。よって、この分子間力は分子間距離が短い方が強くなります。そのため、体積Vを減少させると、気体分子間の距離が短くなることで強くなった分子間力により分子の移動速度が低下するため、ボイルの法則で求めた値より圧力は低下します。
実在気体におけるシャルルの法則のずれ
・シャルルの法則について簡単に復習
・シャルルの法則により、理想気体において、圧力一定のもとで、絶対温度Tを下げていくと、絶対温度Tに反比例して体積Vも減少していく。これは、絶対温度は気体分子の運動エネルギーと関係しているため、運動エネルギーを減少させると(絶対温度を低くすると)、体積は減少します。
実在気体の場合:実在気体では分子間力が働くため、温度を低下させると液体、固体へと体積の変化が起きます。そのため、低温において計算した値よりもさらに低くなります。また、実在気体では気体に体積をもちます。そのため、絶対温度を0まで低下させても体積は0となりません。よって、さらに低温では計算した値よりも高くなります。
実在気体 ≒ 理想気体となるには?
以上のように、実在気体では理想気体と違い、気体分子間での相互作用や体積があるため計算値に違いが生じることがわかりました。では、実在気体と理想気体を同じように扱える状態はあるのでしょうか。
気体の分子間の相互作用を無視できる実在気体の条件
気体の分子間相互作用は分子間の距離が短いほど、強くなります。よって、分子間の距離を長くすれば実在気体でも理想気体のように扱えるのです。→ 低圧
また、気体の分子間相互作用は状態変化させるほどの力であるが、一個一個の力は非常に弱い力です。よって、分子一つ一つを分子間相互作用の影響が無視できるほど運動エネルギーを付加させれば実在気体でも理想気体のように扱えます。→ 高温
気体の体積を無視できる実在気体の条件
気体の体積を無視できるように、気体をいれる容器を大きくれば実在気体でも理想気体のように扱えます。→ 低圧
以上から、実在気体でも理想気体のように扱える条件は以下になります。
理想気体 ≒ 実在気体となる条件
低圧・高温
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